随聞小話第十三回 ひまわり誌(2023年2月号から転載)
大根
大根は冬の季語。古今好んで使用される季語。大根で詠われる情趣も様々である。
流れゆく 大根の葉の早さかな 高浜虚子
この句は大根の葉が流れていく景を詠っているだけだが、雨が川となり大根を育てまた蒸発して蜘蛛になり、という水の大循環・地球の営みをその底に思い描いているのだと虚子はいう。これは虚子の俳句の「案じ方」の実例。この句を虚子は東京の久品仏で作った。そのころは付近は田舎で畑がたくさんあったはずだ。私も若い頃、悩み事を抱えながら辺りを散歩したことがある。うれしかったのは、小さな清流でお百姓さんが大根を洗っていたことだ。一本分けていただいて、その場で囓ってみた。生きている実感がする味だった。
生きるとは大根カリリ生齧る 冬扇
