随聞小話第十六回 (初出:ひまわり俳句誌2023年5月号)
牡丹
閻王の口や牡丹 を吐かんとす 与謝蕪村
発行所の牡丹は島根の大根島産。かれこれ三・四十年も前に移植した。毎年晩春になると昨年はどうしたことか咲かなかった。今年は二輪、ゆらりと咲いている。やはり美しい。
牡丹の句では〈牡丹散て打かさなりぬ二三片〉が素晴らしいが、若い時の私は冒頭の〈閻王〉に横尾忠則の健さんや橋本治の「とめてくれるなおっかさん」のポスターのイメージを重ねておおいに感激したものだ。唐獅子牡丹の情趣を引きずったのだろう。〈牡丹に金閣燃ゆる闇のあり 柳生正名〉になるとさらに情念が深く重くなる。一つの季語もいろいろと言語空間を膨らませていくものだ。
さりとても今年の牡丹ふたつほど 冬扇

