随聞小話第7回(初出:ひまわり誌2022年7月号)
「豆かん」というスイーツがありました
あんみつ(餡蜜と漢字で書くとおいしくなさそう)は私の郷愁の食べ物の一つ。母親の好みでした。しかも黒蜜をかけたものでなければならないので、浅草の梅園に時折一緒に行ったものです。
食べ物になると蘊蓄をたれたがるのは人の常。蜜豆が登場したのは江戸末期だといいます。そうそう浅草の梅園には「豆かん」というメニューがありました。蜜豆と寒天だけのしろもので、蜜豆の原型だといいます。みつ豆が進化してあんみつになったようですが、元祖は「若松」という店が一九三〇年に創案した説と一九三八年に「月ヶ瀬」が最初という説があります。「月ヶ瀬」の餡蜜は徳島生まれの俳人橋本夢道の創案だったというのが夢道の伝記などに書かれていますので、その方が面白いですね。月ヶ瀬のあんみつは女学生やご婦人におおいに流行したようです。キャッチコピーも彼の作、俳人だからお手の物だったのですね。
蜜豆をギリシャの神は知らざりき 橋本夢道
(西池冬扇)

