随聞小話第十九回
ホトトギス
ほととぎす 平安城を 筋かいに 与謝蕪村
今年はホトトギスの声が例年になく多い。梅雨になって激しい降雨が続くので気候の変動が起こった結果かもしれぬ。
さてホトトギスには、昔の都人ならずとも、初音(忍び音)を待つという楽しみがあるが、「ザ季語」ゆえの種々の興趣がある。近代以降は〈谺して山ほととぎすほしいまま 杉田久女〉など威勢がよいのが主流。
他にも「啼いて血を吐く」というマイナー調の趣もある。蕪村の掲句も私には、なにやら不吉なモノを感じる。中国故事による「蜀魂」という名前のせいかもしれぬ。
ホトトギスやがて静かに雨となる 冬扇