一口選評
特選1句
七輪の炭真っ赤っ赤秋刀魚焼く 佐野新一 :このごろは見なくなったが記憶にあるリアルな景
入選9句
猫バスは野越え丘越え大銀河 井内胡桃 :猫バスも日本の「文化」になった。ジブリの世界の景
蜩や今日の作業はあと少し 武田道子 :蜩には夕方が良く似合う。
山道のひととこ葛のこぼれ花 藤本紀子 :葛には多くの趣がまとわりついている。
秋澄めりたこせんべいのぺったんこ 生島春江 :これもなんとなくノスタルジーを感じさせる句。
白露や久留里の峰に星ひとつ 松岡才二 :久留里は千葉県の地名であるが、趣のある響きがある。
帰りたくなる夜のありて蚯蚓鳴く 松岡さつき :誰が何処へを思わせる、こういう趣も俳句にはある。
朝早く歩く人あり秋の雲 鎌村恭子 :朝から快晴。雲はいつでも季節を纏っている。
山盛りのすだち搾れり阿波女 鶴瀬 萩 :阿波人は酢橘を贅沢に使用する。
名月を見上げて合わす手の温み 大塚正子 :合掌に触感と情感をこめた。
秋の蚊や炊事する手にふっと来る 吉田正子 :この句の内容は一章で詠う方が良い。
放送の夕焼けこやけ秋の五時 山本茂美 :漢字とひらがなの混用は無意味。
跳ぶ飛蝗その上を飛ぶ赤蜻蛉 川口厚子 :複眼の視点を持つ試み。ただ、この句材では陳腐。
長き夜や犬の寝相のよく変わる 丸岡扶左子 :それなりに面白い。
空摺の雨の浮世絵秋来る 上荷千賀 :新鮮な句材が良い。下五は動きそう。
零余子飯揃わぬ粒を楽しみつ 中富はるか :新鮮なところが良い。
白菊を柩の友へただ涙 平 弥生 :哀悼という「挨拶句」
高い硝子窓叩く九月の雨 尾﨑宏子 :「高窓の硝子を叩く」であろう。
八月や投げては戻るブーメラン 錦野斌彦 :それなりに面白いが、ブーメランの戻るのは当たり前。
秋風や漁村の中のステーキ屋 錦野絹子 :取り合せの妙。
秋渇きよくよく噛めと戒めん 上地禎子 :面白い。
秋の蚊一匹風呂場に追い詰める 今岡京子 :新鮮な句材。
稲妻にドキリスリラー大音響 斎藤いちご :似たような言葉の羅列。
なめくじら果てて残せし道の跡 清水規代 :似たような句材の句が多い。
稔田の野太い声や誰か呼ぶ 田辺美葉 :下五に工夫が必要。
白バイは前に後ろに月今宵 安田五郎 :もうすぐ「そこの車止まりなさい」とか。
生垣の坊ちゃんなんきん数知れず 成田ヒデ子 :新鮮な句材でかつ面白い。
電柱の鬣となり葛かずら 山田百代 :なるほど感。
八朔の寺や法螺貝鳴り渡る 山下悦子 :それなりです。
秋雨や砂場うなだれブルドーザー 大賀 毬 :ブルトーザをうなだれさす句は多い。
とりどりの紫揺れて庭に秋 松尾智子 :とりどりにもう一工夫。
芋の露右に左に転びけり 今倉雅子 :狙いはいい。もう一歩。
花カンナ恩師に続く坂ひとつ 坂本明召 :続くの意味があいまい。
星月夜薪風呂の湯のやわらかし 土井清子 :うらやましいが、炊くのが大変ですね。
草撫でて歳時記めくるは初嵐 谷本健一 :うーん。分かったような、ないような。

