ひまわり3月号から 鑑賞

/ 蔵本芙美子

買初めは撫養街道の鯛焼屋  西條千津

 買初めとは新年最初にする買物で、昔は正月二日にするものであったし、店も開いていなかったように思う。作者の買初めは鯛焼きであったというからなんとも微笑ましいが、きっと散歩かドライブ途中で奥様へ求めたものだろうと察する。やさしい方なのである。「撫養街道」の固有名詞がここでは生きている。

頼まれて鬼の絵を描く一月末  川口恒星

 ときは節分の豆撒きを前にした一月の末のこと。多分お面を作るのであろうための鬼の絵を描いてほしいと頼まれて、いま描いている。誰に頼まれたか、などはどうでもよくて、描いている今を楽しんでおられる。「頼まれて」の上五からの導入に読者の興味が惹かれる。

参道の鳥居の前で今年来る  清水規代

 除夜詣をしていて鳥居まで行ったときにちょうど新年になった。新たな気持ちで鳥居を潜られたことだろう。良い新年となることまちがいなし。おもしろいところを捉えた一句だと。

産土へ田圃道抜け初詣  安喜律子

 産土とは産土神のこと。田圃道を抜けて行く神社というところに、素朴な初詣の様が表現されている。

新幹線の尻尾光りて七日かな  岡 花菜

 新幹線に乗っていて作られた句だと。新幹線は長いと16両編成とかで走るため、カーブになるとその先頭や最後尾車両が車中からよく見えておもしろい。私も以前に先頭車両が雲の峰へ突っ込んでいくというような句を作ったが、この方は最後尾の光るのを見られた。尻尾と詠まれていて楽しい。

星近し宇宙は近し除夜詣  藤村ひかり

 昨年の除夜はいい天気だった。お参りを終えて空を見上げたら星が近くに光りふと宇宙を思った。除夜詣を宇宙とつないだスケールの大きな句。俳号ひかりさんらしい。

初御空鍔よりかじる帽子パン  谷脇マリ子

 あの甘いおいしい鍔のところは、私ならあとまで残しておきたいところ(美味しいところは最後に食べる主義なので)だけれど、かといって帽子の天辺からかぶりつくこともなかなか難しい・・・。ついついそんな考えに耽ってしまう、楽しい句。初御空が楽しさを後押し。

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